違う道からたどり着いた人たち
実習室に集まってくる人の経歴は思っている以上にさまざまで、年齢の幅も決して狭くはありません。別の仕事を経てから学び直しに来た人と、学校を出てすぐに入ってきた人が、同じ台に並ぶことになります。
学び直しに来た人は、何をなぜ学ぶのかがはっきりしていることが多く、迷いの少なさが目を引きます。限られた時間の中で身につけたいという思いが、日々の実習における集中の濃さになって表れてきます。
その一方で、若いうちから学び始めた人は体の覚えが早く、動きを吸収する場面で強さを見せてくれます。繰り返しの中で形を掴んでいく速さには、そばで見ている側が驚かされることもたびたびあります。
どちらが有利であるかという話ではなく、それぞれが持ち込んでいるものが違うというだけのことのようです。互いの強みが見えてくるようになると、班の中での組み方や役割も自然に決まっていくことになります。
違いが力に変わっていく場面
別の仕事で培ってきた段取りや接客の感覚は、調理の場に移っても形を変えて役に立つことがあります。人の動きを読んで先回りするという癖は、忙しい厨房の中でもそのまま強みになってくれるようです。
若い人が持っている思い切りのよさは、迷って手が止まりがちな場面を明るくほぐしてくれるものです。まず試してみるというその姿勢に、年上の同級生が助けられている場面も決して少なくありません。
年齢や経歴の違いは、はじめのうちこそ距離になりますが、同じ課題に向かううちに少しずつ薄れていきます。時間内に仕上げるという共通の目標が、立場や年齢の違いをいつのまにか静かに越えさせてくれるようです。
調理師専門学校では、資格に向けた学びが、どの立場から来た人にも等しく課されることになります。同じ料理を同じ時間で仕上げるというその場では、これまでの経歴はいったん脇へ置かれることになります。
まとめ
別の道からたどり着いた人と、まっすぐに進んできた人が同じ台に並ぶという光景は、学ぶ場ならではのものです。どちらの側にも相手にはない強みがあり、互いに比べ合うよりも持ち寄るほうがはるかに大きな実りにつながります。
違いが目につくうちは戸惑いもありますが、課題を重ねていくうちにそれが自然と助け合いへと変わっていきます。自分にはないものを持っている人がすぐそばにいる環境は、独学では決して得られない大きな値打ちを持っています。
学び直しに来た人の落ち着きと、若い人の伸びやかさが混ざり合う場は、思いのほか心地よいものになっていきます。その混ざり合いの中で過ごした二年という時間は、卒業したあとも長く支えとして残っていくのだろうと思われます。