包丁を握らせてもらえない最初の数か月に感じた戸惑い
調理師専門学校を卒業して厨房に入った新人の多くが、最初の数か月はほとんど包丁を握らせてもらえなかったと打ち明けています。学校では毎日料理を作っていたのに、現場で任されるのは洗い物や掃除、食材の運搬ばかりで、焦りを感じたという声がよく聞かれます。
しかし振り返ってみると、その期間に厨房の動き方や先輩たちの段取り、道具の置き場所を体で覚えられたことが、後になって大きく役立ったといいます。洗い場から見ていた料理の流れが頭に入っていたからこそ、仕込みを任されたときに迷わず動けたと語る人も多いようです。
立ち仕事の長さと朝の早さには、学生時代とはまったく違う体の疲れを感じ、最初の一か月は家に帰るとすぐに眠ってしまったという告白もあります。体が慣れるまでは食事と睡眠を何より大切にし、休みの日にはしっかりと体を休めることが乗り切るこつだったそうです。
先輩から厳しい言葉をかけられて落ち込んだ日もあったものの、その指摘の多くが衛生や安全に関わる大切なことだったと、後から気づいたという話も聞かれます。言われた内容を記録に書き留めて同じ失敗を繰り返さないようにしたことで、少しずつ信頼を得られたといいます。
半年を過ぎて任される仕事が増えたときに見えた景色
半年ほどたつと野菜の下ごしらえやだしの仕込みを任されるようになり、自分の手が料理の一部を支えている実感が生まれてきたと語る人が多くいます。学校で練習した切り方や火加減がそのまま生きる場面に出会うと、地道な基礎練習の意味を改めてかみしめることになります。
お客さまから料理をほめる言葉が厨房に届いたとき、自分が仕込んだ食材がその一皿に使われていたことに、思わず胸が熱くなったという声もあります。直接お客さまの顔を見る機会が少ない立場でも、料理を通して人を喜ばせているという手ごたえは大きな励みになるものです。
一年の終わりが近づくころには、後から入ってきた新人に仕事を教える役目を任され、教えることの難しさと学びの深さに気づいたという人もいます。自分が戸惑った点を思い出しながら伝えることで、改めて基本の大切さを確かめられ、自分の成長も実感できたといいます。
一年を通して最も大きく変わったのは技術よりも、厨房全体の流れを見ながら自分の役割を考えて動けるようになった点だと話す人が多いようです。周りの状況に合わせて次の作業を先回りできるようになると、仕事への自信が生まれ、料理の世界で働く楽しさが増していきます。
まとめ
働き始めてからの一年は、包丁を握れない焦りや体の疲れ、厳しい指摘に戸惑う日々から始まり、やがて任される仕事が増えていく変化の時期だといえます。洗い場で覚えた厨房の流れや、学校で磨いた基礎が少しずつ生きてくる過程こそが、新人にとっての大切な学びとなっていきます。
資格を持って現場に出たばかりのころは思うようにいかないことも多いですが、一年後には見える景色がはっきりと変わっているはずです。調理師専門学校で学んでいる人は、先輩たちのこうした本音を心の片隅に置いておけば、最初の壁に出会ったときにも落ち着いて前を向けるでしょう。