速く手を動かしても間に合わなかった入学直後の打ち明け話
調理師専門学校に入ったばかりのころ、実習の時間内に料理を仕上げられず、手の遅さに悩んでいたと打ち明ける在校生は少なくありません。包丁を速く動かす練習を重ねても状況が変わらず、原因は手先の器用さではないと気づくまでに、しばらく時間がかかったそうです。
よく観察してみると、時間がかかっていたのは切る作業そのものではなく、次に何をするかを考えて立ち止まる時間だったといいます。鍋を火にかけてから調味料を探したり、使う器を取りに行ったりと、細かな迷いが積み重なって大きな遅れになっていたのです。
同じ班の手の早い同級生を見ていると、動きが特別に速いわけではなく、作業と作業の間に無駄な間がほとんどないことに気づかされます。その差が段取りにあると分かったとき、焦って手を速めることより、先に流れを組み立てることが大切だと実感したと語っています。
ある先生からは、料理の速さは包丁の速さではなく、頭の中で先の工程をどれだけ見通せているかで決まると教わったそうです。この言葉をきっかけに練習の仕方を変えたところ、数週間で時間内に仕上げられる日が増え、実習が楽しく感じられるようになったといいます。
作業を始める前の数分間で決まる段取りの組み立て方
段取りを整えるうえで最初に取り組みたいのは、作業を始める前の数分間で、すべての工程を紙に書き出して順番を確かめることです。時間のかかる煮込みや湯を沸かす作業を先に始め、その間に切る作業を進めるといった重ね方を考えるだけで、全体の流れが大きく変わります。
使う食材や調味料、器や道具を最初にまとめて手元にそろえておくことも、迷いの時間を減らすうえで効果の大きい工夫の一つです。必要なものが目に入る場所に並んでいれば、取りに行く往復が減るため、慌てずに次の作業へ移れるようになっていきます。
作業の合間に洗い物や片付けを少しずつ進めておくと、作業台が常に広く使えるため、終盤になって手元が散らかって慌てることがなくなります。仕上げの時間に余裕が生まれると、味見や盛り付けに気持ちを向けられるので、料理全体の完成度も自然と上がっていくはずです。
実習が終わったあとには、予定どおりに進んだ工程と遅れた工程を振り返り、次に変える点を一つだけ書き留めておくとよいでしょう。毎回少しずつ手順を見直していくことで、自分に合った段取りの型ができあがり、どんな料理にも応用できる力が身についていきます。
まとめ
早く動くための段取りの正体は、手を速く動かす技術ではなく、作業を始める前に流れを見通し、迷う時間を減らす準備にあるといえます。工程を書き出し、道具と食材をそろえ、合間に片付けを進めるという基本を重ねることで、時間内に仕上げる力は着実に伸びていきます。
資格を取って料理の現場に立てば、段取りの良し悪しが仲間との連携やお客さまを待たせない働き方に直結することになるはずです。調理師専門学校で過ごす今の時間を使って、自分なりの段取りの型を少しずつ育てていけば、自信を持って厨房に立てる日が必ずやってくるでしょう。