二年のあいだに確かに残るもの
卒業の日が近づいてくると、この二年のあいだに何が身についたのかをあらためて考える時間が訪れます。手が覚えた工程の数よりも、自分の判断の速さや場の落ち着きのほうに変化を感じることが多いようです。
包丁の扱いや火の加減といった基本は、繰り返しの中で確かに体へしみ込んでいくことになります。考えなくても手が動くようになってくると、その分だけ味を確かめることに気持ちを向けられます。
段取りを組み立てる力も、この二年のあいだに実習を通じて大きく育っていく部分の一つだと言ってよさそうです。工程の順番を入れ替えて時間を作るという考え方は、どんな現場に出たとしても役に立ってくれます。
人と組んで働くという感覚も、班での実習を何度も重ねているうちに自然と身についていくことになります。声のかけ方や仕事の引き受け方の呼吸は、教わるというよりも繰り返しの中で自然に覚えていくものです。
後から悔やまないための時間の使い方
振り返って悔やまれるのは、余裕のある時期にもっと数を積んでおけばよかったという一点に尽きます。忙しくなってからでは、同じ工程を落ち着いて繰り返すための時間が取りにくくなってしまいます。
苦手なままにしてしまった工程は、時間が経つほど手をつけにくくなっていく傾向があるようです。早いうちに一度でも自分の手で通しておけば、その後に続く学びの流れがずいぶん楽になっていくはずです。
先生にいつでも直接尋ねられる機会は在学のあいだに限られており、後になってその貴重さに気づかされます。小さな疑問でも分からないままにしておかず、その日のうちに必ず確かめておく習慣をつけたいところです。
調理師専門学校の二年は、資格に向けた学びと実技の反復が組み合わさって進んでいくことになります。料理の腕は日ごとに目立って伸びていくものではなく、後から振り返ってその変化に初めて気づくものです。
まとめ
もっと早くから数を積んでおけばよかったという悔いは、多くの人が卒業の間際になって一度は抱くもののようです。それでもこの二年のあいだに残ったものは確かにいくつもあり、手と体がその積み重ねをしっかり覚えていてくれます。
残る力をより大きくしたいのであれば、余裕のある時期の使い方こそが結局は最も大きな分かれ目になっていきます。早いうちに苦手な工程を一度は通しておき、分からないことをその日のうちに解いておくという構えが効いてきます。
卒業のときに手元に残るのは、覚えた献立の数ではなく、どんな場でも動ける身のこなしのほうだと思われます。その身のこなしを作ってくれたのは、地味に見えていた日々の繰り返しだったのだと後になってようやく分かります。